2014年1月13日月曜日

「C世代」が動き出す 〜“デジタルネイティブ”がリードする社会へ〜

ニュース概要

 JK(女子高生)のカワイイ文化を世界に――。都内の私立女子高に通う椎木里佳さん(16)が株式会社AMFを設立したのは2013年(中学3年時点)のバレンタインデーのことであった。
 資本金は45万円。15年間の全貯金でも足りず、一部は父親から借りた。設立目的は「テレビ番組の制作」「日用品雑貨の企画」などと記入した。
 15歳だった彼女は起業の壁を「渋谷に遊びに行くくらいの感覚」で軽やかに越えた。(1/9 日経新聞 朝刊より)

株式会社AMF 概要

 2013年2月14日設立。“世界の10代を元気にしたい”をモットーに、日本のJKのかわいい文化を発信するための企画、制作、番組出演などを行っている。
 社長の椎木里佳氏は、2012年5月サイバーエージェントから女子中高生向けサービスのアドバイザー起用され、スマホ用アプリ「JKめざまし」を開発。米国や台湾のCATV局もJK文化のネット動画を買いたいと打診している。

ニュース詳細↓

日本経済新聞(2013年1月9日) 恐るべき子どもたち 次代の寵児か、あだ花か
http://www.nikkei.com/article/DGKDASM10700N_X00C14A1MM8000/




このニュースの背景(Why?)

 「最近の“若者”はすごいな・・・」と(一応)若者ながらに感嘆してしまったニュースであった。椎木里佳さんは1997年生まれ。筆者のちょうど10年下である。「中学3年で起業」なんて、おそらく10年前では考えられなかったニュースではないだろうか。

 自分が中学3年生の時をふと思い出す。当然ながら、自分で会社を作ろう(今の僕が作れる)なんて概念すら1ピコグラムも存在しなかったし、「世界を元気にしたい」とか「社会にメッセージを発信したい」なんて思いも脳裏をよぎることすらなかった。

 「中学3年で起業」というニュースは椎木さん“個人”からわき起こったニュースだろうか?察するに、彼女自身、意識が高く視野も広い、相当しっかりした女性なのだろうが、やはり一つの社会現象として捉えるのが妥当であろう。

 着目すべきは椎木さんをはじめ、今どきの若者達が「C世代」に属するということである。



ニュースの背景1:「C世代」の台頭


「C世代」とは何か
 「C世代=ジェネレーションC(Generation C)」は、アメリカでここ数年、10代・20代の若い世代を指して使われるようになった新しい言葉である。年齢範囲について明確な定義はないが、1990年以降に生まれた若者達を指すというレポートもある。

 なぜ「C」なのか?それは今どきの若者立ちが、以下に挙げるような「C」を頭文字にした共通性質を持っているからである。

  • Connected(常にみんなとつながっている)
  • Community(共同体を形成する)
  • Change(変化・新しいものを好む)
  • Create(創造性がある)
  • Communication(会話好きな)
  • Collaboration(みんなと協力する)
  • Contribute(貢献意欲の高い)
  • Casual(四角ばらない)
  • Cameleons(自分のキャラを変化させる) 等

 若者読者の方は、自分と友人の性質と照らし合わせていかがだろうか。「たしかに!」と思われた方も多いだろう。実際、「よくこれだけ “C” でくくれたな」というのが筆者の第一感想であったが、不自然な語呂合わせではなく、的確に若者の性質を捉えていると思う。

 この「C世代」という切り口で捉えるならば、椎木さん自身はC世代の性質を間違えなく兼ね備えている。“世界の10代を元気にしたい”という貢献意欲(Contribute)、“日本のJKのかわいい文化”に着目する創造性(Create・Change)、自分をとりまく社会・共同体に対する情報発信(Community・Connected・Communication)等々。さて、次に気になるのはC世代が生まれた背景であろう。

C世代の背景1:インターネット・スマホ等のテクノロジーの台頭
 上述したC世代の性質リストを一目すると、ほとんどの項目でインターネット、特にSNSが係っていることに気がつく。これらの技術が今の若者達を生んだといっても過言ではない。

 椎木里佳さん達「C世代」は物心ついたころからネットと接する事のできる環境で育ち、小学生のころからFacebookやTwitterと時代を共にしてきた「デジタルネイティブ」である。彼女自身、Twitterで4000人以上のフォロワーに対し「マグノリアベーカリーが表参道に進出するみたいです」「今から永遠の0見る!」など日々情報発信を怠らない。

 なお、このように積極的にみんなとつながる若者もいる一方で、「学校にいても、家にいても誰かとつながらなくてはならず、それをやめたら仲間から外されてしまう…」と、強迫観念的にFacebookを開く若者も少なくないらしい。





C世代の背景2:不安定かつ低成長な時代
 筆者もそうだが、C世代が育ってきた時代は、決して未来が明るい時代ではなかった(先進国全体的に共通)。日本の場合、「失われた20年」と呼ばれ、リーダーシップのない首相が次々と撃沈していき、就職もできるかわからなければ、年金だってもらえないと言われる・・・このような不安定な状況下において、人は互いに結びつきを強める。震災後、「絆」というキーワードが広まったことも同じである。

 未来に不安をもつC世代にとっては、「我が道を信じてゆく」ことよりは、友人および社会的関係の優先度が上がるのはある意味必然なのだろう。



ニュースの背景2:身近な成功者の存在

 筆者がこれから先、さらに椎木さんのような若手起業家やアーティストが増えていくと思う理由の一つに、昨今の有名人との距離感の変化が挙げられる。
 
 我々C世代の目に映る「成功者」は、自分と同じ「普通の人」との距離が昔より遥かに近いように思われる。AKB 48はその典型だ。「普通の」女子高生がオーディションをうけて、(大量に)選ばれ、テレビ出てCDを出したのち、「普通の」市民と相対して握手を交わす。また、AKBに限らず、プロ野球選手だって、偉い社長だってTwitterを見れば日常生活も知る事ができ、会話だって出来る

 つまり、C世代にとってはテレビに映るような「有名な」人々が、雲の上の人というよりは、「自分とそんなに変わらない人」という概念がどこかにあるのではないだろうか(少なくとも筆者にはそのような意識はある)。また、ネットを使えば、世にあふれるサクセスストーリーに容易に出会う事も出来る。

 したがって、「自分もやればできる」と動機づけるための根拠となる情報・イメージが容易に手に入る環境下にあることも、このニュースの重要な背景の一つと思われる。





このニュースが意味するもの(So What?)

 総務省の就業構造基本調査によると、10代の起業者数は12年に全国で800人(多くは大学生)。リーマン危機前の07年に比べ100人減ったものの、逆風の中で椎木さんを始めとする10代女性の起業は100人から3倍の300人以上に増えた

 高いITリテラシーを持ったC世代の若者(デジタルネイティブ)が大人になっていくにつれ、ますます起業者数は増えていくだろう。理由は2つあり、一つは先に述べた成功イメージの得やすさ、もう一つはネット等のテクノロジーや制度(資本金なしで起業可能)の発達で、ますますチャンスが増えると思われるためである。

 このように、活気あふれるC世代に期待を抱く一方で、これらの世代の中に「格差」が生まれるのではという懸念を抱かずにはいられない。

 先に述べた通り、C世代を取り巻いているのは「希望」ではなく「先行き不透明な時代」である。チャンスが世の中に転がっている一方で、“みんなとつながっていたい”という思考、“場の空気を優先する”思考は、チャレンジングな精神を育みはしない

 したがって、意欲=アグレッシブさ に格差が生まれ、意欲のある若者は自ら情報を率先して集め、上に上に進むのに対し、保守的な若者は共同体の中でますます安定志向になるという「2極化」が進んでいく事が予想されるのである。


 


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